Column

2015.01.07

前提およびコンセプト

香木を取り巻く環境は、日々、厳しさを増しています。 21世紀を迎えようとする頃から、従来の産地から上質の香木が新たに採集されることが極めて稀になってしまい、それを生業としてきた人々は、植樹による人工栽培や偽物づくりへと努力の方向を転換するようになりました。30年以上前に採集された上質の香木の価値は益々高まり、一方で、需要に応じて供給を続けると二度と同程度の香木が入手できないというジレンマを抱える状況になりました。その結果、香木の卸(卸売・仕入れ共に)は、事実上不可能となっています。更に近年では外国からの需要が急増し、国内で販売するのに比べ倍以上の価格で取引される状況が何年か続き、貴重な香木が相当量海外に流出したと思われます。

そんな中、小さな会社であり続けようと考える香雅堂は、希少な香木をごく少量の単位で、必要とされる方々と「共有させていただく」という考え方を選択しました。何十年も以前に渡来した貴重な香木を大切に扱い、できる限り永い歳月に亘って販売を続けることによって、少しでも多くの皆さま方のお手許に残していただけることを目指そうという考えです。並行して、様々な機会を活用して、上質の香木を確保する努力も続けています。それらの試みにより、香道あるいは聞香という素晴らしい伝統文化が幾久しく継承されるよう、微力を尽くす所存です。

香木は、その使用目的に応じて、二種類に大別されると考えています。第一は、香道に用いる場合。第二は、一般的な聞香の対象とする場合です。

前者の場合、「香道は流派の御家元・御宗家に代々継承される規範に則って成り立つ」という大前提のもと、流派の分類の基準に当てはまるかどうかを精査・判定される必要があります。従って、「香木として上質であるとしても香道では使えない」ということが有り得ますし、逆に、「香木として上質とは言えないけれども、香道で使える基準を満たしている」ということも有り得ます。一方で後者の場合、制約を受ける規範も基準も存在しませんから、純粋に「個人の好み」に応じて自由に愉しむことになります。つまり、香木の選択肢は、より多彩になります。

香雅堂は、開業以来一貫して「香道という文化の継承・発展に僅かなりとも寄与する」ことを念頭に置いて香木を選択し、保存して参りました。その分類の基準は、御家元・御宗家に付銘(極=きわめ)をお願いする等の経験を通じて学ばせていただき、準じるよう心掛けています。(本来、香道に用いられる全ての香木に極を頂戴するのが理想ですが、実現は困難です。)もとより木所の分類や五味の判定は流派の御家元・御宗家の一大事であり、余人が云々できるものではないと心得ます。そのような意味合いにおいて、香雅堂の分類は飽く迄も非公式のものとご承知おきください。

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