Column

2015.12.22

佐曽羅について

佐曽羅に関しましては、用いられる香木の種類が、流派によってかなり異なります。すなわち沈香しか用いない流派、白檀・赤栴檀を用いる流派、そして白檀・赤栴檀に加えて「沈の佐曽羅」として沈香を用いることもある流派(会派)が存在します。いずれの場合も、判定・分類は、流派に継承される基準に則って御家元・御宗家により為されます。

ここでは、沈香の佐曽羅について触れさせていただきます。

佐曽羅として判定される沈香は通称「タニ沈香」と呼ばれるもので、先代からの教えによりますと、全てインドネシア産です。(香木の来歴については改めて別の機会に触れたいと思いますが、年代・地域の特定は、産出・渡来年代が古いものほど困難で、採集者の特定は、ほぼ不可能と言えます。)

インドネシアの沈香樹

インドネシアの沈香樹(=原木)

インドネシアは13,466の島々から構成される広大な領域を持つ国で、沈香の原木(沈香樹)も多種に亘ります。ワシントン条約付属書Ⅱによって保護されている沈香樹は「ジンチョウゲ科アキラリア属全種」、「ジンチョウゲ科ゴニュステュルス属全種」及び「ジンチョウゲ科ギリノプス属全種」ですが、インドネシアにはそれらの殆どが分布しています。中でも「タニ沈香」と呼ばれるものは、ボルネオ島カリマンタンに多く分布する「アキラリア マラセンシス(Aquilaria malaccensis)」であると考えています。

沈香の搬出風景

近年にカリマンタンで採集された沈香の搬出風景

(カリマンタンには、他にもベカリアナ・ミクロカルパなどのアキラリア属の他、エクスコエカリア アガローチャ、エンレイラ アガローチャ等、数種類の沈香が分布します。スマトラ島にはマラセンシスの他ベカリアナ・ヒルタ・ミクロカルパ・モスコウスキー等のアキラリア属が分布し、スラベシ島やパプア州にもアキラリア属が分布しますが、ジャワ島にはエクスコエカリア アガローチャ、ウィクストロエミア アガローチャそしてウィクストロエミア キャンドレアナが分布しますがアキラリア属は分布しないようです。)(以上、インドネシアにおける天然沈香の産出地域及び樹種につきましては、弊社関係の現地住民による調査結果・見解に基づくものです。)

佐曽羅として銀葉に載せることが許される「タニ沈香」を選別する際に決め手となる「匂いの筋」を言葉に表わすことは、他の木所の場合と同様に、至難の業と申し上げざるを得ません。(20年以上の聞香歴をお持ちの方々には、「いかにもタニらしいタニ沈香」で通じると思いますが。)上質のインドネシア産沈香が仄かに放つ鹹味(しおはゆみ)が、どこか真南蛮のそれと似ている部分があり、混同しがちのため、注意が必要かと思います。

PAGE TOP