Column

2016.06.22

寸門陀羅について

寸門陀羅も、佐曽羅と同様に、流派によって用いられる香木の種類が異なります。沈香以外の寸門陀羅が如何なる香木なのか、実は長い間不明でした。 その昔、故山本霞月女史の薫陶を受けられた或る先生から『これが御家流で使われて来た典型的な寸門陀羅よ』と幾つかの塊を見せていただいた名香『苧環(おだまき)』は、見かけも香気も明らかに沈香とは別種に思えましたが、では何の植物かと問われれば、答えようがありませんでした。

別の先生からも三炷ほどの欠片をお預かりし、『これと同じ香木を探してちょうだい』と頼まれもしましたが、依然として見当も付かないまま、何年かが経ちました。そして、全くの偶然をきっかけに、同種の香木を探し当てる幸運に恵まれたのですが、その辺りの詳細につきましては、項を改めて、採り上げたいと考えています。

ここでは沈香の寸門陀羅について触れさせていただきますが、それらは”佐曽羅と同じく、「タニ沈香」と通称されるインドネシア産である”というのが、香雅堂の見解です。(「タニ沈香」に関しましては、以下のページをご参照下さいませ。)

[link]佐曽羅について

沈香の佐曽羅・寸門陀羅が産地を同じくすることは、真那賀・真南蛮の場合と同様に、先代からの教えにより学びました。様々な形状をした沈香の塊が何十kgという単位で産地から届くと、先ず、使い途に応じて選別する作業が始まりました。(当時、最も大量に輸入されていた沈香は、インドネシア産でした。)

最優先されたのは、「聞香に適するかどうか」の判断でした。インドネシア産の場合、それは、「佐曽羅に使えるか」・「寸門陀羅に使えるか」と同義です。適すると判断しても、香木としての品質が低いもの、つまり樹脂化の度合いが不十分であり使い勝手の悪い塊は、聞香用からは除外されました。 その上で、実際に香気を確認してみて、用途が決められてゆきます。

聞香に適さないものは、分割(角割)・刻・粉末等に向けられました。慣れてくると、外見上の様子からでも、両者の違いや品質の高低を見分けることが出来るようになりました。近年になって外見上の鑑定の根拠や方法に関してご質問を頂戴することが増えていますが、残念なことに、うまく回答することは困難です。以前にも触れましたように、数を当たってデータを蓄積していただくしか、方法は無いように思えます。

佐曽羅と寸門陀羅との違いを聞き分けることは、産地を同じくする沈香ということもあり、困難な場合が多いと思われます。 決め手となりうるものとしては、「酸味」を挙げることができると思いますが、寸門陀羅の場合、「味」と言うよりも「特有の香気」と表現するのが相応しいように感じられます。

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