「上質の香木」について
7/26付『香木の鑑定』で、『「香木は、黒くて重いものが上質である」という常識を・・・』という表現を使ったところ、その常識が果たして正しいのかどうかについてご質問を頂戴しました。
真実はもう少し複雑ですので、補足しておきます。
香木の品質を判断する基準には、二通りあります。
すなわち、判断しようとする人が
A:全く個人的な趣味として香木を愛好されている場合
B:香道の稽古を志していて、流派に属されている場合
とに分けられます。
Aの場合、判断の基準は、本人の好みに在ります。誰が何と言おうと、自分が良いと思えれば、それは良い香木です。
Bの場合、判断の基準は、御家元(御宗家)の中にのみ在ります。流派として使うに足りる香気を放つかどうか、分類の基準に当てはまる特徴(匂いの筋)を持っているかどうか、位(9段階に分けられる品質の程度)はどれくらいか――全ては、歴代に継承される基準に照らして判定されます。
そこに、個人の好みが入り込む余地はありません。
どちらの場合でも、上質と判断される香木が、全て黒くて重いとは限りません。
但し、上質と判断される香木の塊の中に黒くて重い部分がある場合、その部分は、白くて軽い部分に比べて樹脂分が多く含まれていて、より上質であると言うことはできます。
かなりややこしい表現になるのを覚悟の上でまとめてみますと、「黒くて重いからといって上質とは限らないけれど、上質の香木の良い部分は、黒くて重い。」ということになります。
世の中には黒くて重い“偽物”(人工の沈香・伽羅)も多数出回っていますから、ご注意下さい。
大抵の場合、実際に聞いてみた上で好みに合うかどうか判断することが不可能ですから、尚更です。
もし購入を迷われていることがあれば、ぜひご相談下さい。お役に立てるかも知れません。
(麻布 香雅堂 主人)