Column

2016.12.22

「奇気」について

今日は「奇気」について少し触れておきます。

香木の香気を五味という概念だけで全て表わすことは困難で、それだけに「師説を受ける」ことが重要になるわけですが、ここでは一般的な話として受け止めていただければ幸いです。

「奇気」とは、五味に当てはめることができない、特殊な香気を言い表す表現とされています。
古人はそれを『杏仁のごとき匂い』などと表現しているようです。

最上質の香木が保有している香気の質は高く、要素も複雑多岐に亘ります。
それらが適温で加熱される際に、つまり銀葉に載せられる瞬間に、最も低温のうちに立って、あっと言う間に消えてしまう香気、それが「奇気」だと解釈しています。

伽羅の「ほととぎす」は、奇気を出すとされています。
20年以上前のこと、山本霞月氏の一番弟子とされていた竹山千代様に聞かせていただいた際に、確かにそれを聞いた記憶があります。
ひと声鳴いて飛び去り、再び聞くことができない時鳥の鳴き声を香木の銘に付けたのかと、感動を覚えました。
(文字通り「一声」と命銘された名香も、存在します。)

香木って、ほんとうに不思議で、素晴らしい存在だと思います。
無我の境地で、香木が放つ微かな声を聞く・・・聞香は、いつも新鮮な感動を与えてくれます。

(麻布 香雅堂 主人)

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