Column

2013.10.05

国立能楽堂公開講座「『源氏物語』と新作能『夢浮橋』に因み」 (2000年2月5日開催)

国立能楽堂が瀬戸内寂聴さんに台本を委嘱した新作能『夢浮橋』の特別企画公演が、2000年3月3日・4日、千駄ヶ谷の国立能楽堂において開催される運びとなりました。そして、その決定と時を同じくして『初演に先駆けて、公開講座を開催しよう』という発案が企画制作担当(当時)の猪又宏治氏からあり、ご相談を受けることとなりました。

その結果、公開講座の企画は、次のようにまとまりました。

1日目・・・2000年1月29日(土)午後2時より
第一部:「源氏物語の装束『かさねの色』」
講師=高田 倭男(高田装束研究所所長)
ゲスト=野村 萬斎(狂言師)
第二部:「新作能『夢浮橋』のこと」
講師=瀬戸内 寂聴(作家)

2日目・・・2000年2月5日(土)午後2時より
第一部:「『源氏物語』の薫りの世界」
講師=尾崎 左永子(作家)
第二部:実演―『源氏物語』の薫りを再現
講師=山田 眞裕(香雅堂主人)
協力=志野流香道 麻布教場

『源氏の恋文』・『源氏の薫り』の著者である尾崎さんと組んで講座を担当させていただくことにして、まっ先に考えたことは、『源氏物語』の「梅枝」の巻に登場する薫物「梅花」の薫りを、自分の想像通りに再現することでした。
それは、寂聴さんが台本の制作を引き受けられた際、思い悩んだ末に『源氏物語にない源氏物語の場面を創作しよう』との考えに落ち着いたことと、同様の志向だったかも知れません。

平安時代に実際に調合されていた「梅花」の資料を基に、『はなやかに今めかしう、すこしはやき心しらひを添えて、めづらしき薫り加はれり』と蛍兵部卿に評せしめた紫の上の“才能のきらめき”を想像しつつ薫物を創作する過程は、とても楽しいものでした。反面、貴重な伽羅を惜しげもなく用いたため、「失敗は許されない」という怖さも十分に体験できましたが。

完成した“香雅堂主人特製の「梅花」”を尾崎さんにお聞かせしたところ、たいそう感動して下さり、「匂宮(にほふみや)」という銘を付した上、折句による証歌まで詠んで下さいました。
公開講座が尾崎さんの軽妙にして洒脱なお話と相まって大好評を博したのは、ある程度予想していたとは言え、本当に嬉しいことでした。

① 『薫物「匂宮」の原料について』―山田 眞裕
<基本とした調合>
『薫集類抄上』より、東三條院詮子(円融帝女御、一條院母后) が調合した「梅花」を復元。

沈(ぢむ)      八両二分
占唐(せんとう)   一分八朱
甲香(こうこう)   三両二分
甘松(かんしょう)  一分
白檀(びゃくだん)  二分三朱
丁子(ちょうじ)   二両二分
麝香(じゃこう)   二分
薫陸(くんろく)   一分

② 資料より「匂宮」証歌(尾崎 左永子)

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