SUQQU 平安時代の貴族のかおり
麻布 香雅堂は、2016年12月1日に発売されたSUQQU(スック)の新商品 『センティッド モイスチャライジングハンドクリーム WT』『センティッド ハイドレイティングミスト WT』の香りを監修しました。独自に調合した薫物(たきもの)がベースとなった『白茶/White tea』の香りは、朝露のような清々しさとみずみずしさが特徴です。
好奇心がチャレンジへと突き動かす
私たちにとって、化粧品というジャンルでの商品開発に直接携わるのは初めての経験でした。以前、海外のフレグランスブランドの方に“和の香り”についてレクチャーをしたことはあったのですが、今回はブランドにとって重要なオリジナルフレグランスの開発に、しかも“監修”という立ち場で参加するということで責任重大です。最初にお話をいただいた時は正直、「自分たちに何ができるのだろう?」と思いましたが、それ以上に「何ができるのかを知りたい」という気持ちが強かったのでお引き受けしました。
薫物と“メイク”の共通点とは?
ベースとなる香りを薫物(たきもの)で作ったのは、平安時代の貴族文化であった薫物、つまり「独自に調合した香り」を焚きしめるという行為が、現代のメイクアップに通ずる自己表現のツールであると感じたからです。和の香りの世界には線香や香木・印香など、さまざまな形態がありますが、自己表現の手段としては、薫物が最適と考えました。
灰と炭を使い、薫物を焚く
イメージを和歌に、和歌を香りに
香りを作るにあたり、まず商品のコンセプトに合う和歌を選定することから始めました。香道や茶道の世界では、関連するさまざまな物に“銘”をつける伝統があり、香りについては万葉集や古今集などの和歌を引用することが多いのです。こちらでいくつかご提案した中から選ばれたのは、万葉集から引用した一句でした。
「月草に衣は摺(す)らむ朝露に濡れてののちはうつろひぬとも」
この歌に詠まれた月草(=露草)や朝露から連想する“清々しさ”や“みずみずしさ”を香りに落とし込み、白檀・沈香・安息香等の伝統的な香料を調合したオリジナルの薫物を製作しました。ただ、薫物をそのまま化粧品に配合するわけにはいきませんから、その先はラボの研究員の方々の手にゆだねることになりました。出来上がった香りは非常に完成度が高く、化粧品としての香りへと見事に昇華されていました。
平安時代の貴族が、かおりを愉しむ
意外な反応、まさかの完売
発売からしばらく経ったある日、SUQQUの方々が香雅堂を訪れ、ミストが完売したという、うれしいニュースを届けてくれました。しかも、カウンターで「この和の香りはなんですか?」と聞かれることが多く、ご購入いただいたお客様からは「この和の香りがよい」とのお声を少なからず頂戴したそうです。お客様に好意的に受け入れていただけたことはもちろんですが、説明を聞く前からこれを“和の香り”として認識していただけたことも私たちにとっては大きな喜びであり、驚きでもありました。
“和の香り”の可能性はどこまでも
今回の経験で、私たちは“和の香り”にはまだまだ可能性があると確信し、古の時代から受け継がれてきた香りを、化粧品やルームフレグランスといった身近な製品にも生かせると実感できました。そうした商品をきっかけに、より多くの方々がお香や香道に興味を持っていただければ幸いです。
“香を聞き、涼を呼ぶ”香りが誕生
『SUQQU×香雅堂』の第2弾として、2017年6月2日に新製品が数量限定でリリースされました。
香雅堂が調香した薫物をベースに、柚子とネロリの香りを加えた、涼しげな印象のミストとハンドクリームです。
(商品スペック)
[左] SUQQU センティッド ハイドレイティング ミスト YN(60ml/5,400円)
[右] SUQQU モイスチャライジング ハンドクリーム YN(SPF25PA+++/90g/4,320円)
ともに数量限定。